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演題4「薬剤による消化管粘膜障害と考えられた2例」

杉並区医師会学術研究発表会(2019年2月9日)
あべ内科消化器科クリニック 安部 幸一

はじめに

虚血性心疾患の治療や脳梗塞の治療をはじめとして、様々の疾患で血流改善のため、抗血小板剤や抗凝固剤などが使われているが、これらの薬剤が原因となって、消化管の粘膜障害や消化管出血が発生する「負の側面」があることを頭に入れておかなければならない、という場面に私たちは、しばしば遭遇する。今回2つの症例を経験したので、ここに報告する。

症例1

77歳男性、某病院の頸動脈エコーで内膜の肥厚を認め、抗血小板剤(クロピトグレル)が開始された。約3ヶ月後の健診で、軽い貧血を認め、当院にて内視鏡検査を行ったところ胃体部・胃前庭部および十二指腸に出血性のビランを認めた。抗血小板剤の副作用と考え、この内服を中止し、胃粘膜保護剤の内服を開始し、2ヶ月後の内視鏡検査では、粘膜病変が消失したことを確認した。

症例2

32歳女性、某大学病院でANCA関連血管炎の診断で血小板凝集抑制作用のあるプロスタグランディン製剤(リマプロストアルファデクス)が使われていた。当院には微熱・下痢・血便の症状で来院、感染症を考え、抗生剤と整腸剤の内服治療を行った。いったん症状が消失したが、約1ヶ月後に症状が再燃し、大腸内視鏡検査を施行したところ下行結腸から直腸に掛けて連続性のない深掘れタイプの潰瘍や粘膜の浮腫状変化を認めた。

結語

抗血小板機能を持つ薬剤は消化管粘膜障害にも注意を払う必要がある。

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